ブログ
咬合性外傷
「歯が痛い」、「歯が染みる」と来院される患者さんの中で、ここ最近、特に多い咬合性外傷について説明していきたと思います。
コロナの影響で生活環境の変化やストレスのかかり方の変化でしょうか
とにかくここ数年本当に多いように感じます。
咬合性外傷と病名をつけることになる多くの患者さんの主訴は「歯が痛い」、「むし歯かもしれない」、「噛むと痛い」、「歯が染みる」などが多いです。この症状があり気にかかっている方は、虫歯が無い・気にするほどの歯周病ではないと言われた方はまだまだ注意が必要です。
咬合性外傷とは
咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)とは、受け止められないほどの強すぎる噛み合わせの力を受け、歯や歯を支える歯茎(歯肉)、骨(歯槽骨)などの歯周組織や顎関節などに外傷(ダメージ)を起こしてしまうことや、重度の歯周病で歯を支える歯茎や骨などの歯周組織が弱った状態で噛み合わせることで起こる外傷などのことを言います。
噛み合わせがもともと悪い人は、噛み合わせのバランスが取れていないため、早期接触を起こしやすく、噛み合わせが良い人に比べ咬合性外傷を起こしやすいという傾向にあります。
しかし、噛み合わせというのは、誰でも同じ状態が続くわけではなく、環境によって変化していきます。もともと噛み合わせが良かった人でも、歯ぎしりや食いしばり、歯周病の悪化に伴い、噛み合わせのバランスが悪くなってしまうこともあるため、咬合性外傷は誰にでも起こる可能性があると言えます。
症状
- 噛むと歯が痛い
- 詰め物や被せ物がよく外れる
- 冷たいものがしみる(知覚過敏)
- 歯が欠ける
- 歯が折れる
- 朝起きると顎が痛い
- 頭が痛い
- 歯が揺れる
- 神経が死ぬ(失活)
- 顔が腫れる
などの症状が見られます。
咬合性外傷の症状は様々で、歯に直接影響する症状としては、冷たいものがしみる(知覚過敏)、噛んだ時の痛み、詰め物のズレや脱離、歯の亀裂、歯の破折、歯の神経が死んでしまったり、というようなものが見受けられます。
また、日常的に異常な強い力で噛むことは歯だけでなく、歯茎、顎骨、顔周りの筋肉にも悪影響を与えてしまいます。異常すぎる食いしばりが続くことで、歯が痛い、顎周りが痛い等の症状を通り越し、歯の破折、歯の神経が死んでしまったり、歯茎が腫れたり、顔面が大きく腫れたりと激痛を伴う場合もあります。
患者さん方は、朝起きて頬周りや頭が痛いなどして自覚することが多いようですが、なんか変だなと思いつつも、さほどの自覚症状なく、気づいた時には歯にヒビが入り神経が死に化膿することで気づく場合もあります。
一概に、酷い痛みが伴う症状ばかりではないですが、異常なほどの咬合力は、顎関節にも影響を及ぼし、顎関節症を引き起ことも多々あり首や肩の痛みというような症状も出てくることもしばしば見受けられます。
種類と原因
咬合性外傷には一次性と二次性の二種類に分けられ、それぞれ原因や症状が違います。
一次性と二次性は別物で、一次性が進行して二次性になるわけではありません。
一次性咬合性外傷
一次性の原因は歯ぎしりや(側方圧)・食いしばり(ブラキシズム)、咬み合わせ(早期接触)によって歯にかかる強い負荷です。
歯ぎしりは就寝時にギリギリと音を立てて歯を左右に擦り合わせることで、食いしばりは就寝時だけでなく日中にも行われる悪習癖、噛み合わせは顎の位置関係や力加減で起こりうる早期接触です。
このような場合に、必要以上に強い噛む力で歯と歯を噛み合わせると上記のような症状が起こります。
音が鳴る歯ぎしりは、周りから指摘されることで気づくことが多いかと思いますが、音が鳴らない歯ぎしりや、食いしばり、噛み合わせは、痛みが出るまでなかなか自分自身では気づかず、噛んだ時の違和感や顎周りの違和感はなんか変だなと流してしまう事がある為、注意が必要です。
二次性咬合性外傷
2次性の原因は進行した歯周病(重度歯周病)です。
歯周病が進行し歯を支える骨(歯槽骨)が溶けた状態になると、歯を支える力が弱くなっていきます。
そのため、正常な咬合力だけでも歯や歯茎がダメージを受けてしまいます。
また、咬合性外傷で歯周病が悪化することはあっても、咬合性外傷で歯周病になるのではありません。あくまで、歯周病の増悪因子となります。そうなる前に、歯周病と診断された場合は痛くもないからと放置せず、早期に治療を行う事を強く勧めます。
歯医者的にも重度の歯周病になってから助けを求められるより、早い段階で来てもらったほうが、有難いです。重度の歯周病は、抜歯になる可能性も多いです。抜歯は歯医者的にも気分の良いものではありません。
治療法と予防法
咬合性外傷では歯の症状、歯茎の症状、顎関節の症状など様々な症状が出ます。
それらの症状が出た際に、その症状だけを一時的に改善することは可能かもしれませんが、咬合性外傷が原因になっている場合、原因そのものを解決しなければ、また症状を繰り返し悪化してしまう恐れがあります。
そのため、日常の生活習慣や舌の位置、姿勢なども見直した上で、噛み合わせの調整・マウスピースの装着・ボトックス治療・歯周病の治療が必要となっていきます。
一次性咬合性外傷
噛み合わせが原因の場合は、噛み合わせの調整(早期接触の調整)だけで治る方も多くいますが、どちらかというと症状を訴える方の大半は噛む力の強い方が多いです。そのような方は、日中だけでなく、就寝時の食いしばりも強い傾向にありますので、噛むと痛い、顎周りの痛みが続くなどの場合は、歯を守るためにマウスピースを作り就寝時に使ってもらうことがメジャーな治療の一つとなります。
噛む力は人と比べることが出来ないので、知らず知らずのうちに正常な咬合力を超え異常が咬合力になってしまうのかもしれません。
集中している時や、力を入れる時などに自分が食いしばっていないか意識してみると意外と強く食いしばっている方が多いのでまずは、意識改善を促します。
一番大切なのは、強く食いしばっているという事を本人が自覚し、起きている時に食いしばりを止める努力をする事です。
無意識でやっていたことをやめる事は、それなりの忍耐力が必要となりますが、
実際の診療を行なっていく上で、噛み合わせの調整と本人の意識改善・マウスピースで痛みや違和感が改善する方が多いです。
そして、どうにもこうにもマウスピースが苦手、毎日マウスピースを入れられない方という方にはボトックス治療(ボツリヌス治療)をお勧めしています。
咬筋(咀嚼筋の一つ)にボトックスを打つことで噛む力そのものを弱める治療です。
定期的にボトックスを打つことで、廃用性萎縮により咬筋自体が小さくなり筋肉の機能を弱め正常に近付けることを目的としています。
イメージとしては、筋トレをやめさせ、筋肉を萎ませるという感じです。
二次性咬合性外傷
噛み合わせの調整(早期接触の調整)と歯周病の治療がメインとなっていきます。
歯を支える骨(歯槽骨)が歯周病で溶けてしまっている為、歯周病の治療を行なっても治らない場合もあります。そうならないためにできるだけ早い段階で歯周病の治療を行い、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けるのを食い止める必要があります。
外傷性咬合で痛い目を見ないために
- ふと噛み合わせがおかしいな?
- なんか噛むと痛い時があるな
- 最近食いしばってるな
- 顎周りが疲れるな
- 朝起きると顎周りが痛いな
などの自覚があり気になっている方は
症状が大きくなる前に受診をお勧めします。
悩む前に歯科医師にご相談下さい。